[学長×先輩企画Web対談]ともに頑張ろう、1年生。

対談

新型コロナウイルス感染症の影響で、春学期はすべての授業がオンラインで実施され、1年生は入学式や通常のキャンパスライフを体験できないという異例の日々を過ごしています。そんな1年生のために、交流の場を設けようと立ち上がった学生たちがいます。 仕掛人である入学前教育「先輩プログラム」スタッフの学生3名が真銅学長とオンラインで対談しました。

1年生とオンラインイベントで交流

真銅学長
1年生が入学後一度もキャンパスに来ることができない状況が続いています。そのなかで、この3人が1年生のために自発的に行動を起こしてくれました。以前からOLS(追手門大学リーダーズスクール)や入学前教育で積極的に取り組んでいる姿を見ていたので、いつかやってくれるだろうと思っていました。どのように実現してくれるのかと期待していましたが、このように1年生に対して非常にやさしい形で運営してくれていて、とてもうれしく思います。
北田
僕たち3人は去年も入学前教育プログラムのスタッフを務めました。今年も3カ月ほどかけて準備を進めてきて、あと少しで当日を迎える段階になってコロナで止まってしまいました。誰が悪いわけでもありません。受け止めないといけないのですが、それでもあきらめたくないと熱弁したところ、石田さんと速水さんが呼応してくれた。それが活動の始まりです。
石田
1年生の姿が見えないなか、何ができるんだろうと3人で話し合いました。そこでtwitterを利用することを思いつきました。「#春から追手門」というタグが流行っているようだし、アカウントを開設して悩みを聞けば1年生の現状がわかるのではないかと考えました。
速水
当初は直接1年生に語りかける機会を探っていました。オンラインで運営するヒントになったのは、田上先生(田上正範 准教授)の授業アシスタントでした。Zoomでも授業がちゃんと成立していたし、初対面の相手でもスムーズにコミュニケーションがとれているのをみて、私たちもオンラインでできるじゃないかと。
真銅学長
皆さんはスマホ文化が根付いている世代。そのあたりの対応力には安心感があります。
石田
まずはtwitterでイベントの参加者を募ります。イベント運営には大きく2つの流れがあり、一つはZoomやWebExを活用したオンライン交流会。もう一つはイベントの参加には心理的なハードルがあるという人のためにTwitCasting(ツイキャス)による動画の生配信を行っています。
北田
オンラインでかつ初対面同士という状況ですから、アイスブレイクが大切です。ジェスチャーゲームや自己紹介ビンゴゲームといったゲームから入って打ち解けるようにしています。
速水
そのなかで1年生たちの疑問や不安を聞き出して、自分の経験を伝えるなどして、解消してあげられるように努めています。
真銅学長
1年生からはどんな声があがっていますか。
速水
履修に関することが多いですね。大学からのアナウンスはあっても、それだけでは不安という人がいます。普段なら周りの人に尋ねればすむのですが、今はそれができませんので。
北田
オンライン授業だと友達ができないという声も多くあります。
石田
その一方で、イベントに参加してくれた1年生同士のつながりも生まれています。Zoomでのイベントを自分たちで企画して動いているのです。すごいなあと思います。

自分の殻が外れる瞬間 - オンラインでの信頼関係 -

真銅学長
画面上での会話には独特の緊張感がありませんか。教室での授業では皆が横並びなのに対して、オンラインになるとお互いに正面をみている格好になります。それと演じている要素があるのではないかと思っています。画面の前では表情をつくるけど、本当は違う自分がいる。だからオフラインになった瞬間に思わずため息をついたり、開放されて別に自分に戻ったり、そんな体験をしていませんか。
北田
まさにその通りです。初イベントのとき、僕たち3人も新入生と一緒にとても盛り上がって楽しめたのですが、終了後は「ふ〜」とため息が出ました。新入生側もそうだったのではないでしょうか。twitterをみていると、新入生のなかには画面に顔を映したくないので参加を躊躇する人もいるようです。
石田
私も最初は「ふ〜」でした。でも慣れてきました。オンラインに対する体力が身についたようです。たしかに演じているという要素はありますね。ただ何度もイベントを開催していると、演じている自分の殻が外れる瞬間があるんです。北田さんが担当したイベントで、盛り上がって延長したことがあったでしょう。
北田
はい、メチャ楽しかったですね。
石田
そのときは、楽しさのなかに入り込んでいるから演じていないんです。殻を取り除いてどう本音で接していくのか。これは私たち3人の課題でもありました。これからも追求していきたい部分です。
速水
慣れが殻を破ってくれる側面もあります。1年生のほうも最初は緊張して殻をつくっていたのが、2度3度と参加するうちに結構話してくれるようになったり、最初は画面をオフにしていたのがオンにしてくれるようになったり、数をこなすことで信頼が生まれたという手応えがあります。対面と同じように、オンラインでも信頼関係が大事だと思いましたね。

「大学生活はバイキングだ」

真銅学長
普段でも初対面の相手には構えたり演じたりしているはずなんですね。でも我々はそれに無自覚になっている。今回のオンラインでの顔合わせを通じて、日常を振り返って、普段から空気感などを気にして人と接するべきだと気づいてくれればいいと思っていました。ところで、皆さんが1年生のときを振り返って、これまでにどんな成長が遂げられたと感じていますか。
北田
メンタル面ですね。まだまだ未熟ではありますが、追手門に入ってからさまざまなことに挑戦してきたという自負はあります。僕のオハコのプレゼンがありまして「大学生活はバイキングだ」と言い続けてきました。大学では自分で(料理を)選んでつかみ取ることが大事。入学当初は、大学生活とはこういうものだという固定観念があったのですが、バイキングのようないろんな経験を通じて、その思い込みは全部なくなりました。1年生の頃にくらべて、自分自身の人生を切り開いていくための行動は取れるようになったといえます。
石田
一言でいえば、大人になったということでしょうか。1年生の頃は人間としての幅が狭かったですね。入学前教育スタッフの活動においても、当初は意識の差があって、それで衝突も経験しました。でも今は、意識に温度差があっても、それがいい悪いではなく、それぞれの有りようの違いだけだと気づけるようになりました。そうした気づきや自分なりの答えが見いだせるようになったのが成長した点です。
速水
私は追手門でメチャメチャ成長させてもらいましたよ。プレゼンやコミュニケーションの能力面もそうですし、私も石田さんと同じで大人になれた。私が追手門を好きな理由は、人のあたたかさとやさしさ。ただやさしいだけでなく、厳しさも含むやさしさです。困ったときに手を差し伸べてくれる仲間がいて、先生も本気で接してくださる。ときにはキツい言葉もありますが、そのなかでも愛が伝わってくるし、より頑張ろうと思えます。このあたたかみのある環境こそが、私が成長できた源です。

全1年生を対象としたオンラインイベントを計画中

真銅学長
我々が願っていることをまさに体現してくれています。皆さんのその経験をぜひ1年生につなげていってほしいですし、このような学生がさらに増えることを期待しています。その意味で今回の企画は非常にありがたかったし、それを受けた今の1年生が今後、皆さんのような役割を果たしてくれることを期待します。それと継続性。1回限りではなく、続けることで初めて生み出せるものがあります。その点でも皆さんに感謝します。今後の展開はどうなりますか。
北田
今年度の入学者数は2200人。その全員を対象にしたオンラインイベントを計画中です。これでオンラインイベントはいったん区切りとします。
石田
入学前教育では一人ひとりが「カタリバ」という5分間のプレゼン機会を持っています。それを2200人のイベントでやりたいと思っています。なぜか。1年生にとって、インスピレーションや刺激を受け取れる場になるという確信があるからです。これからの学生生活に対して、ポジティブな思いを持ってもらえるイベントにしたいと考えています。
速水
私たちは1年生の頃から授業だけでなく、課外活動など充実した学校生活を送ってきましたけど、今の1年生はそれができない状況です。それでもオンライン授業を受けるだけの日々ではなく、この時間をどう有効に使うのか。それを伝えられるようにしたいと思います。課題は告知です。2200人に対してどう広報するのかを現在検討中です。
真銅学長
オンラインというのは対象を閉じてしまいがちですが、そうではなく新入生全員という発想。このスケール感を持って企画してくれていることに勇気づけられました。皆さんから学んだこととして、持ち帰りたいと思います。

全学生でこの経験をプラスに変えていく

真銅学長
今学期は学生全員がオンラインで授業を受けています。これを一過性のできごととして終わらせるのではなく、この経験が皆さんにとってプラスになる方向で考えていきたいと思っています。授業についてはすべて対面に戻すのではなく、このスタイルのよさはよさとして残すことで、方法の多様性につながるのではないかと個人的には考えています。今の期間がすべて貴重な体験だったと振り返れるようにしていきたいですね。それでは最後に、1年生へのメッセージで対談を締めくくりましょう。
北田
真銅学長が言われたように、一人でも多くの1年生がこの状況を経験できてよかったと思えるようになってほしいと思います。これは1年生だけでなく僕らもそうですね。そんな環境をつくれるように一緒に頑張っていきましょう。
石田
今の時間を自己理解のための機会にしてほしいと思います。自分を理解した先に、やりたいことがみえてくるはずです。ともに歩んでいきましょう。
速水
追手門という大学には自分を成長させる環境があります。私もこの大学で大きく変われました。皆さんもそうであってほしいし、そのために私たちも後押ししますよ。
真銅学長
1年生の皆さんには、こうして体を張って頑張りをみせてくれている先輩からいろんなことを学び取ってほしいと思います。さらに全学生に伝えたいこととして、我々は人から学ぶ存在であり、一人で本を読んでいるだけでは身につかない力がたくさんあります。できるだけ多くのいい情報を与えてくれる友人、先輩、教員、職員と巡り合っていくことが自分のためになります。キャンパスが再開した際には、それを意識して大学生活を過ごしてほしいし、そのためのいろんなツールを大学としても用意していきます。皆で頑張っていきましょう。

対談メンバー

真銅 正宏 学長

石田 美紗樹(いしだ みさき)さん
心理学部 心理学科 4年 

速水 愛海(はやみず めぐみ)さん
地域創造学部 地域創造学科 4年

北田 真大(きただ まひろ)さん
心理学部 心理学科 3年生

※学部学科、学年は取材時(2020年5月時点)のものです