[オンラインで、オンラインを語る]経営学部 村上喜郁教授とゼミ生が春学期を振り返る

対談

キャンパスへの入構禁止を受け、春学期はすべての授業がオンラインに切り替わりました。
初めての経験だった人も多いオンライン授業。この春学期を振り返り、経営学部の村上喜郁教授と村上ゼミ生がオンラインで語り合ってくれました。秋学期は対面授業とオンライン授業の両方が実施されます。今後のオンライン授業の受け方の心得として、ぜひご覧ください。

「学修を止めてはいけない」

池川
コロナでキャンパスに立ち入れなくなり、授業がオンラインに切り替わることが決まったのが3月でした。4月から授業が始まるという状況で、これほど短期間のうちにオンライン授業に取り掛かれたのは凄い対応力だと思います。
村上先生
大学ですので、何より学修を止めてはいけない。この点は非常に意識しました。僕自身、他大学でも非常勤講師を務めていますけど、本学の対応はかなり速かったと思います。要因の一つに茨木総持寺キャンパスがいわゆるBYOD(Bring Your Own Device)仕様になっていることがあり、1・2年生が全員パソコンを持っていることを前提に授業設計と制度構築ができました。さらに経営学部の場合、教員間のつながりがとても緊密で、Zoomを使った打ち合わせを綿密に行えたことも大きな理由です。
池川
たしかに、先生同士のつながりが強いことは普段から感じています。村上先生は日頃から学生とのコミュニケーションにSNSを活用するなど、ICTツールを使うのに長けておられますが、そうでない先生はいろんなご苦労があったのではないでしょうか。
村上先生
それは感じますね。普段授業でパソコンをお使いにならない先生は、かなり勉強されたのではないかと思います。資料を紙ベースで作成されている場合、デジタルに置き換える必要もあります。その点、経営学部は恵まれていて、情報システム専攻にコンピュータに精通した先生がおられるので、わからないことがあれば、相談することが出来ました。
近藤
村上先生はゼミ、講義ともにZoomを活用されています。オンライン授業のよい点と、逆に難しい点についてはどうお感じですか。
村上先生
よい点は効率的に授業ができることです。難しいのは時間的な余白部分がなく、フレンドリーなコミュニケーションがとりにくいところかな。どうしても直線的に授業開始、終わり、という形になってしまう。その一方で、すでに人間関係のある3・4年生に関してはオンラインでも雑談ができたり相談に応じたりできているので、オンラインでも人間関係さえあれば対面との違いはあまりないと感じます。
池川
先生ご自身のやりやすさという点ではどうですか。対面とオンラインでの違いはありますか。
村上先生
どちらにもメリット、デメリットはありますが、やりやすさという点では、そんなに差はないですね。でも事前準備の負担はかなり増えました。
池川
Zoomでの講義では、村上先生は事前にWebClassでノートや資料を配布し、はじめに前回の復習と課題内容のフィードバック・質疑応答、それから講義、そして課題や小テストという流れになっています。オンラインになってから、僕たちのためにいろいろ準備してくださっているのは感じています。パワーポイントの画面は本当にわかりやすいです。
村上先生
去年まではあえて黒板を使って、大きな声と板書で迫力を出して授業を盛り上げるということを考えてやっていました。黒板での授業は頭の中に授業内容が入っているので、それほど準備は必要ありません。だから今はムチャムチャしんどい。ただ、パワーポイントなどは一度つくってしまうとアップデートしながら転用できますので、来年以降にオンライン授業が一部継続されたとしても、今年ほどの負担にならないとは思っています。
近藤
一つだけではなく、複数の授業でそれだけの準備をされているのは知りませんでした。私たちにとって去年との違いは、課題の量が確実に増えたことです。
村上先生
オンライン授業は効率的なぶん、同じ内容なら対面授業よりも早く終わってしまう。だから90分をしっかりやり切るという点で、各先生方が課題を出すパターンが増えているのは確かでしょうね。僕の場合は、2人とも知っているように提出課題と自主課題の組み合わせで出しています。提出課題ばかりだと、他の課題もあるわけだから締め切りに追われて、かえってクオリティーが下がってしまいます。提出課題1に対して自主課題が2くらいのバランスで、学生の裁量で取り組んでもらうようにしています。池川くんはあまり自主課題やってないな。この話題になってから画面越しに、あたふたした感じが伝わってくる(笑)。
池川
そんな、決めつけないでください。やっていますよ(笑)。授業の終わりに自主課題について、「これは前回の授業の復習を兼ねているから前回の資料を参照するように」と指示をして、関連するスライドも見せてくださるので、前回の授業の内容も振り返ることができて、理解が深まっています。もう一度言いますけど、自主課題もちゃんとやっていますよ!
近藤
私もやっています。授業を受けたことでできる課題なので、頭に残っているうちにやっています。
村上先生
資料を配布して別のことをやりなさいというよりも、授業に関する事柄をより調べたり、まとめたりしたほうが理解を深めるうえでいいと思っています。オンライン授業初期の頃、他大学さんの例ですが、資料がどんどん送りつけられてきて課題ばかり増えていくということが問題になったようです。経営学部では、そういうことになってはいけないと、動画配信や生配信を通じてなるべく対面に近い形で運営することを心掛けています。

メリットも大きいオンライン授業

近藤
村上先生の授業は対面授業のときの開始時刻と同じ時間で始まるので、学びやすく感じています。
村上先生
この時間にこの勉強をするという習慣を身につけてもらう意味でも、決められた時間に予定していた内容をやる形式をとっています。
近藤
その時間でしか受講できないという状況のほうが、ちゃんとパソコンに向き合えるし、内容も入ってきやすいです。時間が決まっていないと、どうしてもダレてしまいます。オンライン授業になってから勉強する習慣もついてきています。
池川
オンライン授業になってから僕自身ちょっと変わったのが、Zoomのチャット機能を使って、結構質問をするようになったことです。対面授業のときはあまり質問をするタイプではありませんでした。学生側のメリットと言えますね。
村上先生
そうですね。実際に授業をする立場から言うと、目の前には学生がいないのでどの程度理解してくれているか、実感が得にくい。教員にとっての一番のデメリットかな。だから反応機能を使って、意図的に反応してもらうことにしています。そして池川くんが言ってくれた質問。対面授業よりも増えています。たくさんの人がいる中で発言するのが苦手な学生でも、チャットなら質問しやすい。もう一度説明してほしいところや、もう一度見たいページなどの要望に応えることで、理解できなかった部分を潰していける。これもオンライン授業のいい点です。
池川
ただ僕はタイピングが速くないんです。だから質問のタイミングが遅れてしまうことがあります。
村上先生
池川くんは本学のBYOD世代ではないからね。その点、近藤さんは1年生のときからパソコンに慣れ親しんでいる。
近藤
私も決して速いほうではないのですが、1年生のときにコンピュータ入門の授業があったので、必要最低限のパソコンスキルは身についたと思います。
池川
それとオンライン授業で、学生にとってのメリットがもう一つあります。最初の履修登録時では、茨木総持寺キャンパスの開講科目を移動時間がネックであきらめていたんですが、すべてオンライン授業になると聞いて、履修登録をしました。今は時間を合わせて移動する必要がなく、スイッチ一つです。
近藤
私は家が遠いので1時限目は大変なんですが、通学のない今は、好きな授業があれば1時限目でも入れることに抵抗がありません。

なぜかゼミ生が一人増えている……

池川
オンライン授業で何かハプニングはありませんでしたか。僕はゼミのとき、ゼミ生ではない人が入室してきたことがありました。「間違ってますよ〜」と呼びかけたのですが、ミュートが掛かっていたのか聞こえない。気になってしょうがなかったですね。でも途中で気づいたみたいで、静か〜に出て行かれました(笑)。
村上先生
村上ゼミでは、2年生のゼミに4年生が入ってきた。2年生が4限目、4年生が5限目と時間が連続していて、ミーティングIDを同じにしているので入れるんです。それで、2年生のゼミの終わり頃に勝手に入室してくる4年生がいたので、そのまま後輩の指導についてもらいました。4年生もそんな風に入って来たら、僕に使われることはわかっていたと思いますが。タテのつながりも出来ていいですね。
近藤
私は当初Zoomのミュート機能を知らなくって、授業中、妹に話しかけられたときの会話が筒抜けになってしまい、先生に注意されてしまいました。
村上先生
そこはね、それぞれの環境下でしか授業を受けられないので、仕方ない面もあります。うちのゼミ生に兄弟に小さなお子さんがいて、子守りをしながら授業を聞いている学生もいます。だから我々教員も学生の事情に多少配慮してあげないといけません。大講義の場合は全員にミュートをかけて静粛な環境をつくるとともに、画面に顔出しできない学生は出さなくてよいことにしています。ただ、ゼミについてはディスカッションなども行いますので、全員が顔出しをするように呼びかけています。
池川
そのゼミですけど、オンライン形式になってから何か変化はありますか。
村上先生
今まで教室で行っていたディスカッションやプレゼンテーションはZoomでも可能です。ブレイクアウト機能を使えば、部屋を小分けにしてグループワークにも取り組めます。一番困っているのが、学外での活動ができないことです。村上ゼミでは企業、自治体と協力しながら商品開発やイベント運営などを行う課題解決型学習を主体に据えているのですが、今は学外での活動ができません。それでも冒頭で言ったように、学修を止めてはいけません。そこで立ち上げたのが、「お家(うち)から×追(お)う力プロジェクト」という取り組みです。地方の産地と連携し、Zoomを使った生産地のバーチャル見学会やセミナーと産地野菜の販売会などを組み合わせて、産地支援を行います。また、例年行っているポスターデザインの研修セミナーや「見山の郷(みやまのさと)商品開発プロジェクト」もオンラインで継続していく形で進めていきます。この状況下で、むしろ新たな付加価値をつけて課題解決型学習を動かしていきたいと考えています。
村上ゼミの活動の様子は、「追手門学院大学 村上喜郁ゼミ Facebookページ」にてご覧いただけます。

今後オンライン対応は、幅広く求められるスキルに

池川
オンライン授業に臨む際、学生に注意してほしい点はありますか。
村上先生
意識してほしいのは、インターネットの向こう側には人がいるということ。オンライン上でもマナー、モラルは欠かせません。今は家から授業にアクセスするので必要以上にリラックスしてしまい、準備が疎かになることがあると思います。そうならないためにも、ギリギリではなく開始5分前にはログインするのがいいでしょう。服装についても気をつけてください。僕はクールビズ対応で襟付きの服を着用しています。
近藤
通学しないのでスッピンのまま授業に出たり、寝起きのままで授業に入ったりしていました。マスクとメガネで顔を覆いましたが。今後は身なりもキチンとします。
村上先生
テクニカルな問題で言いますと、背後のカーテンが全開でかつ前にライトがなく顔が真っ黒に映ってしまう、部屋が全体的に暗い、こういったことにも気をつけてほしい。なぜなら今後はオンラインでのインターンシップ、就職活動が必要になるからです。インターネット映えする化粧や照明など、ネットを通じて自分を上手に見せる技術も、時代への対応なのだと思います。
池川
就職活動の話が出ましたが、4年生の皆さんの就活状況はどうですか。今年は面接もオンライン化されていると聞いています。例年との違いはありますか。
村上先生
あくまで僕の感覚ですけど、これまでは実力通りに内定が決まることが多かったのが、今年は必ずしもそうでないパターンが見えます。ネットでの選考で実力を発揮しきれない学生がいるのに加え、実力のわかっている学生を採用したい企業側の観点からインターンシップで内定が決まることが増えています。早い段階でインターンに参加する意識を持つとともに、オンラインに対応できる就活の技術を磨く必要があります。
池川
わかりました。僕もインターンシップを頑張ろうと思います。さて、すでにオンライン授業が普及・定着してきたわけですが、この状況を踏まえ今後の教育はどうなっていくとお考えですか。
村上先生
対面授業が復活しても、あえて一部をオンライン授業で行うことも効率的な学修のためにはいいのではないでしょうか。対面授業をオンラインで配信したり、ゼミ以外の時間に自主的なオンライン勉強会を開いたり、コロナ禍を機会にした新たな学修体制を築きたいと考えています。学生にとってもオンライン授業に慣れることで、就職活動だけでなく社会人になってからのテレワークにもスムーズに対応できるはずです。
池川
対面授業の復活、待ち遠しいですね。いつもゼミの前にちょっとした時間があって、そこで仲間と軽い雑談をするのが楽しみなんですが、今はそれができません。キャンパスでたわいない会話ができる。それがいかに恵まれたことかを実感しています。今後はそんな時間をより大切にしたいと思います。
近藤
私は2年生なのでゼミの仲間とはまだ直接会えていません。どんな人たちなのか、早く会ってみたいです。
村上先生
そろそろ学食も恋しいでしょう(笑)。通学が再開したら、教室の中だけではなく、勉強したことを実際にどう活かすかということも併せて学ぶ課題解決型学習にもしっかり取り組んでいきましょう。では、直接の再会を楽しみにしています。

対談メンバー

村上 喜郁 教授

池川 亜聡さん
経営学部 経営学科 3年生

近藤 里美花さん
経営学部 経営学科 2年生